かあいそうだたほれたつてことよ
元々、セックスのための器官じゃない。
だから、たぶん、気持ちがいいからしてるんじゃない。
ヒロミは阪東の上に跨って、阪東を受け入れようと、懸命に体を捩る。
「力抜け」
ヒロミの尻を叩いて、阪東は言った。
痛みをこらえて息を吐くときの、ぎゅっと閉じられた目がたまらない。
睫毛の際をなぞるように舌を這わせると、阪東……と涙声で呼ばれた。
体の力を抜こうとするのが、なかなか上手くいかないようだった。
上に乗ってみると言い出したのは自分からで、だから、途中でやめるのはナシだ。
そう言うと頷いて、再び、裸の腰を限界まで沈める。
どうして、気持ちがいいわけでもない、苦しいばかりの行為に、ヒロミは必死になるのか。
「あんまかわいーことすんな」
鼻先が触れ合う位置で囁いた。
そのセリフが意外だったのか、ヒロミは、目を見開いて阪東の顔を見た。
首から顔にかけて、あっというまに朱がのぼっていく。
思わず、なんだろう。
半分咥えた阪東のペニスを締めつけた。
「そんなにうれしいか」
もう一度囁いて、思い切り突き上げた。
「……っく」
ひと息に根元まで入れてしまう。
締めているところにいきなりだから、衝撃で声も出ないようだった。
「うれしいなら、うれしいって言えよ」
肉の薄い尻をつかみ、揺さぶる。
ヒロミは、汗の浮いた阪東の額に唇を押し当て、うれしい、と切れ切れに答えた。
そして、独りでするときのようにペニスを握る。
握った手を上下させながら喘ぐ。
自分が少しでも感じれば、それだけ相手は動きやすくなる。
ヒロミの意図が分かるだけに、その姿はいっそ健気に見えた。
「さっさとケツだけでいけるようになれよ」
嘲るように笑いながら、阪東は、ヒロミの手の上から手を重ねた。
ヒロミのいいように擦ってやる。
同時に激しくなった突き上げに、ヒロミは阪東にしがみついた。
涙は滲んだはしから舌で舐め取り、うわ言のように阪東の名前をくり返すのに、うるせー、と答えてやる。
変態が、とおまけも付けて。
セックスに限り、阪東が求めればヒロミはどんなことでもした。
常にこちらの快楽優先で、時には、求められる以上のこともした。
かつて「狂犬」と呼ばれた男の意外な一面に、当初、阪東の方が戸惑うくらいだった。
今は、
「いー買いもんしたよな」
そう思う。
床の上で仰向けになったヒロミに、両足を大きく広げさせながら、更に深いところを突く。
痛くないはずはなかろうに、ヒロミは笑った。
笑って、苦しげに眉をひそめながら、もっと、と甘えたように言った。
「ホントに」
阪東はため息をつく。
かわいー奴。
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短いえろ。ここはどこで今はいつだ?
ヒロミはベッドの中で(…)阪東に対してすごい従順だと思うのですよ。
阪東のことが好きすぎて、ちょっとかわいそうなくらいかわいい感じで。
「かあいそうだたほれたつてことよ」は、ちゃんと書くと、「可哀想だた惚れたつて事よ」です。
Pity's akin to love.の日本語訳で、『三四郎』に出てきます。